家族

大学でのことと同じくらい多く描かれているのが、桂と家族との出来事である。
桂は父、母、弟との4人家族である。弟は生意気で憎らしいし、母親は子ども扱いで口うるさいし、父親とは距離感がよくわからず気まずいし、と、よくある家族の光景を描いてるように見えるが、そういう日常こそ大切であるとも思う。

桂の家族

弟・晴君(はるきみ)

bro桂より1つ年下。高校を中退し、神戸に引っ越してからはフリーターだったが、レストランの調理場でアルバイトをしたことをきっかけにしてか、料理の専門学校に通うように。アルバイト先で出会った芦屋のお嬢様、笑子と付き合っている。
物語の冒頭では、憎らしい部分が強調して描かれていたが、物語が進むに連れ、現在や幼少期のエピソードを通して、不器用な人物であることや、かわいらしい一面も明らかになる。
子どもの頃は体が弱く、よく熱を出していた。喘息で夜中に病院に担ぎ込まれたこともある。桂曰く、「融通が利かない性格」。その原因として、病がちであった幼少期が影響しているのではないか、と桂は考えている。

父・晴一(せいいち)

dad作中、父親とのエピソードは、弟や母親と比較すると多くない。しかし、桂の洋楽好きは父の影響である。タカ美曰く「パパさんと辰木さんそっくしですわ」。
お見合い結婚であるはずの母とは、まるで恋愛結婚のように仲がいい、と評されることもあるのだとか。

母・さなえ

mom「飽きやすいのに執念深い困った性格」「文句を言うときの母はうるさくてしつこい」など、桂の母に対する評価は辛い。
まあ、同性の親に対してはそんなもんであろうと思う。
晴君が家を出ることに強く反対し、堪えきれず泣き出すなど、家族に対する愛情は深い人物である。ただ大学進学の際に家を出た私にとっては、さなえは少々過保護に感じてしまうが。

祖母・すゑ

sue体が弱い晴君に、両親がかかり切りになってしまうことが多く、その分桂は祖母に懐いていた。嫁であるさなえだけでなく、息子である晴一のことも「さん」付けで呼び、敬語で話す。かといって遠慮がちなわけではない。桂の名付けについて晴一が、男なら「桂太」、女なら「桂子」、と考えて相談したときには、「桂」一文字で、男なら「けい」、女なら「かつら」と提案した。桂が捨て猫を拾ってきた際、飼うことを反対するさなえを諭したのも祖母である。
優しいが、幼い桂の嘘を許さない厳格な人物として描かれている。桂が小学2年生のときに心不全で死去。

家族の関係

決してべたべたしているわけではないが、辰木家は仲がいい、と思う。
その仲の良さは、子どもたちが大人になり、親も少しずつ子離れを覚悟しはじめたからこその、穏やかな仲の良さであろう。
母娘が一緒に買物に行く、というのはよくある光景であるとは思うが(桂としては一緒に買物、というより、ついつい余計なものを買ってしまう母のお目付役、というつもりのようだが)、桂と晴君の姉弟も、よい関係であると思う。私自身も弟を持つ姉であるが、学祭のキッチンスタッフの助っ人を弟に依頼するなんて、ちょっと私には考えられない。その依頼に素直に応える晴君というのも、口では憎らしいことをいいながらも、随分素直であると思う。
余談であるが、姉というものはいくつになっても、弟に対して上から目線であるなと自身を省みても思う。姉のほうが体格や力においても勝る子ども時代は、もちろん姉が上の立場であるし、弟が成長して力が強くなる頃には、弟は負けてあげることを覚えていたりする。姉がいる弟は、その他の兄弟の中で育った男の子よりも大人びているように感じることがあるのは、そのためかも知れない。もちろん、第一子でないとはいえ長男、とか、そういう要因もあるだろうが。